研究概要 |
内耳局所虚血中および虚血解除後の内外リンパ液中Ca^<2+>活量の変化を,イオン電極を用いてpHとともに測定した,内耳局所虚血は,迷路動脈を30分間圧迫し血流を遮断することによった.また,虚血中に生ずるアシドーシスの状態を想定し10ないし20%のCo_2を吸入させ,同様に内外リンパ液中Ca^<2+>活量とpHを測定した.さらに,数理的解析上生理的状態でのPerilymph・Endolymph Barrier(PEB)のPS積を求める必要があり,10mM CaCl_2を含んだ人工外リンパ液で外リンパ潅流を行い,内リンパ液中のCa^<2+>活量の変化を記録した.30分の局所虚血により外リンパ液および内リンパ液中のCa^<2+>活量は,それぞれ虚血前の約1.5倍および4倍になり,局所虚血解除後これらは指数関数的に虚血前の値近くまで回復した.CO_2吸入による呼吸性アシドーシス負荷では,局所虚血中のCa^<2+>活量の変化の極一部しか説明できず,アシドーシスのCa^<2+>活量変化に対する貢献度は小さいと考えられた.一方,電気化学勾配による受動輸送を中心に想定したコンパートメント・モデルに基づいて数理的解析を行ったところ,実測データを非常によく説明できることがわかった.すなわち,内耳の血流が非常に低下するか途絶した状態では,能動輸送や静水圧に基づいた生理的内耳液産生および調節機構が停止し,主として電気化学電位に従ったCa^<2+>の移動が起こると言うことである.
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