研究概要 |
ヒト鼻茸より得た鼻粘膜上皮細胞をコラーゲン膜上で培養し、confluentになった段階で上室の培養液を除いてair-liquid interfaceとし、retinoic acidを培養液に加える事で、分泌細胞、線毛細胞等の分化形態を有する細胞培養モデルの確立に成功した。confluentの段階では1-2層の扁平な未分化細胞で被われるが、air-liquid interfaceでの培養により多列上皮化し、分泌細胞や線毛細胞が出現し多数の分泌顆粒が認められた。AB-PAS染色と、私達の作成したヒト鼻粘膜杯細胞の分泌顆粒を特異的に認識するモノクローナル抗体HCS18の反応性で検討したところ、air-liquid interfaceでの培養後分泌細胞の割合は徐々に増加し、3週間後にはほぼ半数が分泌細胞で占められていた。ムチン(分泌粘液)のコア蛋白の遺伝子であるMUC2からMUC7までのmRNAの発現をRT-PCR法を用いて検討したところ、培養鼻粘膜上皮においてMUC2,4,5AC,5B,7の各mRNAの発現が確認された。この培養モデルを利用して、鼻粘膜上皮からの粘液分泌をモノクローナル抗体HCS18を利用したELISA法で定量的に検討したところ、air-liquid interfaceでの培養開始後、徐々に上清の粘液分泌量が増加したが基底側の培養液とは反応せず、極性を有した粘液分泌が生じていた。また、LPSやヒト好中球エラスターゼはこうした粘液分泌を促進させることが確認された。鼻粘膜上皮からのIL-8の分泌も同様に検討したところ、基底側管腔側両方向に同様な分泌が認められ、TNFαやIL-1βはこうしたIL-8分泌を促進させた。慢性副鼻腔炎や慢性気管支炎に対してマクロライド剤の少量長期投与が有効で、臨床的に鼻汁量や喀痰量が減少することが報告されているが、こうしたマクロライド剤の作用機序を上述した細胞培養モデルを利用して検討したところ、マクロライド剤は鼻粘膜上皮からの粘液分泌やIL-8分泌に直接影響を与えなかった。
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