研究概要 |
研究成果の概要 平成8年度 モルモットにて後頭蓋窩経由で内耳道神経血管束を圧迫する事により,蝸牛血流(CoBF),蝸牛複合活動電位(CAP),聴性脳幹反応(ABR)から聴覚障害を神経障害型,蝸牛循環障害型,神経・蝸牛循環混合障害型の3型に分類できた.すなわち,神経血管束の頭側寄り圧迫では66.7%で蝸牛血流の低下はほとんど見られず,CAPの変化もN2以降のみでABRもII波以降の変化が見られる後迷路性の障害がみられ,これを神経障害型とした.尾側寄りの圧迫では71.4%で蝸牛血流の著しい減少により,CAPのN1波以降およびABRのI波以降のすべてが消失する内耳性の障害例がありこれを蝸牛循環障害型とした.蝸牛血流の部分減少とCAPおよびABRの変化をともなうものは内耳性および後迷路性の両者の障害をしめすことから神経・蝸牛循環障害型とした.これにより,聴神経腫瘍の聴力障害の機序が明らかとなるとともに,後迷路性,内耳性の障害モデルを神経血管束の圧迫部位を工夫することで作成することが可能となった. 平成9年度 内耳道神経血管束の圧迫および解除後のCoBFとCAPのN1波形から,CAPのN1波は70%以上の血流減少で消失し,かならずしも血流の完全途絶を意味しないこと,圧迫時間が短いとN1波は血行再開で速やかに回復するが,30分間以上の圧迫では30%程しか回復しないこと,さらに血流がわずかでも残されていると30分間の圧迫でも60%程回復しうることが判明した.さらに,carbogenの投与により,蝸牛血流の増加がみられ,蝸牛虚血によるCAPの変化に対して,保護作用と回復の改善作用がみられ,急性の内耳性難聴に対する有効性が示唆された.
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