研究概要 |
申請者は、平成8-9年にかけて,眼の潅流,毛様体筋の電気生理および培養細胞の組織化学的研究を行い,内眼手術や外傷に関係したprostaglandins(PGs)や交感神経作動薬,活性酸素類の効果をまとめた.方法として一定圧または一定流量で眼内に潅流液を送り込み、定常状態が得られたときの房水流出率を調べた。 結果および成果 1)それぞれの内眼筋はPGに僅かに反応した.また流出率への影響も、PGs単独投与でわずかであった。ところが、indomethacinで処理しておくとD2以外のPGsは強力な効果を肉眼筋と房水流出率に示した(成果報告書に論文添付)。 2)内眼手術後,交感神経系や活性酸素類と関連した出血や眼内タンパク質異常が生じ,高眼圧が持続することがある.交感神経作動薬や生体内活性酸素類を潅流するとdobutamineやisoproterenolは培養隅角内皮細胞を収縮させた。潅流3時間でdobutamine(1,10,100μM)による流出率は各々対照の、97.3±6.8, 80.8±5.9, 83.5±4.7%になった。 3)H_2O_2では毛様体筋の収縮力が増強した.BCNUと3-aminotriazole(3AT)の処理下でC値はそれぞれ46.5±6.5%(H_2O_2存在下),22.1±7.2%(H_2O_2存在下)に増強した.しかしながら経寺するとBCNUの存在下でもH_2O_2では房水流出率が著明に低下した. この変化はdobutamineやisoproterenolによる隅各内皮細胞や房水流出率の経寺曲線と大きく異なっていたので,活性酸素類の緑内障への関与はcAMPやcGMPを介した反応ではなかろう.房水流出率を変化させ得る物質は殆ど知られていないが,以上の結果は活性酸素類が房水流出に著るしく影響する可能性がある. cGMP濃度を上昇させる一酸化窒素関連薬が強力な効果を追試確認した. 我々はこの2年間の研究を通じzaprinastを初めて眼科領域で使用し,その房水流出改善効果を今後,他の動物でも確認していく予定である.本研究は緑内障の治療に貢献できると考えている.
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