研究概要 |
眼循環系においては,眼内血流量∝(眼灌流圧/血管抵抗),血流量∝(1/血液動粘度),血管抵抗∝(1/血管内径),眼灌流圧∝(血圧-眼圧),の関係がある。また,血流量には多くのパラメータが関与している。生体眼では,これらのパラメータの変動に対し,眼内血流量を一定に維持するための自動調節機構が存在する。虚血性の視神経疾患や自律神経系作働薬投与下では,この自動調節機構の破綻が生ずる。 本研究では,虚血性の視神経疾患として,正常眼圧緑内障を対象として超音波カラードップラー法,レーザースキャニングフローメータを用いて眼窩内微小血管血流速度と網膜組織血流量の測定を行い,両者はともに健常者と比較して有意に減少していることを明らかにした。 次に,自律神経作働薬として,β遮断作用を有する塩酸カルテオロールを正常人眼に継続して点眼した。眼灌流圧が低下するにも関わらず,血流量が増加することを明らかにした。塩酸カルテオロールの局所作用と全身作用が,自動調節機構に相反する影響を与えており,自動調節機構の複雑さを示唆している。 一方,多分岐血管を電気的分布定数線路でモデル化するためには,自動調節機構に関与する多種のパラ-メータを線路のパラメータに対応させる必要がある。本研究では,パラメータの一部である,血管抵抗を決定する要因である,血管の湾曲や血管径を明らかにするため,眼内血管の立体的形状の再構成を行った。 研究期間内では,眼循環動態の各種パラメータについての検討を行った。今後,これらのパラメータをシミュレーション・モデルのパラメータに対応させ,モデルを完成させる予定である。
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