研究概要 |
小児における代表的な悪性腫瘍の一つである神経芽細胞腫をとりあげ、Glnの増殖促進因子としての意義をGlnの細胞内トランスポートの面から検討した。【対象と方法】ヒト神経芽細胞腫細胞のcell lineとしてSK-N-SHを用いた。培養液は10%FBS、2mM Glnを含んだDMEMを用い、5%CO_2、95%Air、37℃の条件下で培養した。細胞を12-well tissure-culture plateに植え、24時間後にGln濃度が100μM,200μM,400μM,2mM(Control)の培養液に変え、1、2、4日後に細胞数を測定した。さらGln濃度変化させた24時間目の2mM Gln,100μM GlnにおけるGlnトランスポートを測定した。【結果】1.細胞増殖におけるGln濃度の影響:細胞の増殖速度はGln濃度に依存した。Gln濃度変化後2日目の100μM,200μM、4日目の100μM,200μM,400μM Glnの細胞数はControl(2mM)に比し有意に低値であった。2.Gln欠乏のGlnトランスポートへの影響:100μM GlnにおけるGlnトランスポート(724±122pmol/mg protein/min)は2mM(1082±23pmol/mg protein/min)に比し有意に低値であった(p<0.001)。3.100μM Gln,2mM GlnにおけるGlnトランスポートのKinetics:10μMから1000μM Glnを含んだNa KRPとChol KRPを用いてGlnトランスポートを測定した。100μM Gln時のmaximum transport velocity(Vmax)は2mM Glnに比し有意に低下した(2mM,14940±460Pmol/mg Protein/min;100μM,12362±471pmol/mg protein/min,P<0.05)が、transport affinity(Km)は変化しなかった【まとめ】1.神経芽細胞腫細胞SK-N-SHの増殖はGlnの濃度に依存した。2.Gln欠乏により細胞内Glnトランスポート速度は低下した。この反応は細胞膜におけるGlnトランスポート蛋白の数(Vmax)の減少によるものであり、トランスポートのaffinity(Km)は変化しなかった。
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