研究概要 |
我々は骨髄腫細胞やマウスB細胞ハイブリドーマなどの形質細胞由来細胞に対して増殖抑制効果を持つ蛋白因子としてアクチビンAを報告した。B細胞ハイブリドーマを用いた解析により,アクチビンAの増殖抑制効果は細胞周期G1期停止とアポートシスの両方を介すること,さらにアクチビンAによるG1期停止はアポートシスに先行することが明らかとなり,細胞周期とアポートシスとの関連が示唆された。我々は本研究により,アクチビンAがサイクリンD2発現抑制とp21/CIP1/WAF1発現誘導により,CDK4を介した網膜芽細胞腫蛋白質(Rb)のリン酸化を抑制することを明らかにした。さらにこのサイクリンD2高発現抑制がG1期停止とアポートシスにどのように関連しているかを検討するために,サイクリンD2高発現細胞株を樹立し,アクチビンAによるG1期停止とアポートシスへの効果を検討した。サイクリンD2の発現はアクチビンAによるRbリン酸化抑制とG1期停止を部分的に抑制するが,アポートシスには全く影響がないことから,サイクリンD2発現抑制はG1期停止に関与しているが,アポートシス誘導とは直接関連がないと考えられた。現在更にp21/CIP1/WAF1とアポートシスとの関連について検討中である。 我々はアクチビンAによる骨髄腫細胞のアポートシス誘導効果が低濃度のレチノイン酸により増強されることを見出した。実際に6症例の骨髄腫患者サンプルについて検討したところ,アクチビンAによるアポートシス誘導とレチノイン酸によるアポートシス増強効果が約3例で見られた。現在症例を増やしアポートシス誘導機構解析を行っている。
|