研究概要 |
口腔レンサ球菌は齲蝕のみならず、心内膜炎、破血症,肺炎、髄膜炎等の発症にも関与している。一方レンサ球菌についてはPRSPをはじめとして各種の薬剤耐性菌が増加してきている。そこで薬剤耐性口腔レンサ球菌によるこれらの重篤な感染症の増加・蔓延を防止する目的で、口腔および鼻腔由来のレンサ球菌Streptococcus mitis,Streptococcus oralisにおける薬剤感受性試験と耐性遺伝子の検索を行った。 上記菌株83株はβ-ラクタム系のCCL,CDTR,CFDRおよびPCGに対してMICはすべて1μg/ml以下を示し耐性菌は検出されなかった。マクロライド系薬に対してはEMのMICは512μm/ml以上の高度耐性株が5株さらにMCIが8〜32μg/mlの中等度耐性が7株検出された。これらの菌株はこれまでに報告されているStaphylococcusおよびStreptococcusにおけるマクロライド耐性遺伝子erm,mef,ere,msr,mphのオリゴヌクレオチドプローブを作成しPCRを行った。その結果高度耐性を示した5株はすべてerm遺伝子と推察される増幅産物が得られたことから、リボソームRNAメチル化酵素による耐性である可能性が高い。さらに中等度耐性菌5株中の1株はStaphylococcusにおいて明らかにされた薬剤排出ポンプによる耐性遺伝子msr内の塩基配列を基に作成したオリゴヌクレオチドプライマーセットによって約1260bpのPCR産物が得られ、この増幅産物がmsrと相同性のある遺伝子であるかどうかについて、現在確認中である。今後これらの薬剤耐性遺伝子のStreptococcusとStaphylococcus間における相互の伝達能の有無について検討する予定である。
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