研究概要 |
腸管をはじめとする粘膜組織は外界と接し、絶えずE coliなど多くの外来抗原にさらされているため分泌型IgAによる局所免疫が発達している。 しかし、腸上皮細胞におけるLPSレセプターの発現やIgA産生細胞の分化における腸上皮細胞の役割など未だ解明されていない。 以上のことからヒト大腸癌株化細胞(HT-29)をsalmonella minnesota由来のLPSで刺激した時発現するLPSレセプターや、HT-29細胞とともに末血リンパ球を培養し、その結果リンパ球の産生する、サイトカインやIgAの発現について検索した。 平成9年度はLPSレセプターの発現について検索し、以下の成績を得た。 1.HT-29にSCおよびLPSレセプターであるCD14,CD11b,CD11c,PAFレセプターの遺伝子発現を認めた。 2.Competitive PCR法を用いて定量的に検索した結果、HT-29をLPSで刺激するとCD11bの発現は約5倍増加し、SCの遺伝子発現は約10^5倍増加した。 平成9年度はHT-29細胞をLPSで刺激した後、コラーゲンコート膜をはった培養カップにヒト末血リンパ球を入れ、3日および5日間培養し、リンパ球のIgAの発現についてRT-PCR法および蛍光抗体法で、またIL-10,IL-5,INF-γおよびTGF-β1の発現をRT-PCR法で検索し、以下の結果を得た。 1.リンパ球をHT-29細胞とともに培養するとIgAの遺伝子発現が増加するとともに、IgA陽性細胞数も増加した。 2.リンパ球におけるサイトカインの遺伝子発現は、LPS刺激でIL-5の発現が出現し、TGF-β1は減少する傾向を、IL-10は消失した。IFN-γの発現はLPSで変化を認めなかった。 以上より腸上皮細胞はLPS刺激することによりBcellをIgA産生細胞に分化させる液性因子を発現していることが示唆された。
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