研究概要 |
頚部交感神経及び迷走神経を前もって切除したネコ(2-4kg)でウレタン・クロラロース(100mg/kg,50mg/kg)で麻酔し、人工呼吸(ミオブロック0.4mg/kg)下で実験した。ネコ舌神経を、求心性に電気刺激(2ms,10Hz,30V)することによって生ずる副交感神経性血管拡張反射に対する視床下部刺激の影響を調べた。その結果、前部視床下部の刺激(2ms,0.5-100Hz,50-500μA)によって血管拡張反射が抑制された。よく精巧かは200μAから始まり、強度依存性に抑制された。また、刺激の周波数については5Hzから生じ、50Hzで最大の抑制効果が生じた。この場合、前部視床下部の電気刺激は50-500μAの範囲とし、血圧に対してはほとんど影響しない強度を用いた。さらに、ニューロンの細胞体のみを選択的に活性化させることのできる薬物であるD,Lシスティン酸を、前部視床下部に、脳定位固定装置をもちいて微量(0.2μl)投与することで、電気刺激の場合と同様の、副交感神経性血管拡張反射に対する抑制効果が観察された。つぎに、GABA受容体の遮断剤であるピクロトキシン(1mg/kg)の投与によって、この副交感神経性血管拡張反射に対する抑制効果が消失した。次に中脳中心灰白質(PAG)に挿入し電気刺激した(10〜200μA)。この場合も舌神経刺激による口唇の血管拡張反応が抑制された。抑制は刺激強度依存性(50〜500μAの間)であった。また最適の刺激周波数は50Hzであった。最も抑制効果を強く示したものはA0.5-A2.5の部位であった。これらの結果から、ネコの視床下部前部および中脳中心灰白質ニューロンから、延髄に存在する副交感神経性血管拡張反射の中枢に対して、抑制性の線維を送っており、そこでの受容体にはGABAが関係しているものと考えられた。
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