研究概要 |
我々は、活性型ビタミンD_3 [1,25(OH)_2D_3]のNO産生に及ぼす影響について初代培養の骨髄細胞および未分化造血幹細胞のモデルとして広範に使用されているHL-60細胞を用いて検討した。自己複製能力の旺盛なHL-60細胞は、外来の刺激に応じて種々のサイトカインを放出して自己の増殖・分化を調節する。1,25(OH)_2D_3やPhorbol 12-myristate-13-acetate(PMA)は単独で単球・マクロファージ方向へ分化させることが知られているが、本研究で用いたProstaglandin E_1(PGE_1),NaFおよびDimethyl sulfoxide(DMSO)などは単独で顆粒球方向へ分化促進することが確認された。また、1,25(OH)_2D_3を軸とした組み合わせでは、1,25(OH)_2D_3+PMAが強力なマクロファージ分化作用を示したほか、1,25(OH)_2D_3+PGE_1および1,25(OH)_2D_3+NaFが強力な顆粒球分化作用を示した。しかし、1,25(OH)_2D_3+DMSOの場合においてはなんらの協調(あるいは相加)作用を認めることができなかった。これらのホルモン・薬物が単独でNO産生能力に及ぼす影響は、PGE_1とNaFにより若干の増強作用が認められたが、1,25(OH)_2D_3,PMA,およびDMSOに関しては有意な効果が認められなかった。これらの薬物と1,25(OH)_2D_3を組み合せた(DMSOの場合を除いて)場合、NO産生に顕著な増加が認められた。また、Westernblottingの結果から、これらのNO産生に関連したNO synthase(NOS)はもっぱら誘導性NOS(iNOS)であることが示唆された。また、構成性NOS(cNOS)の発現は検出できなかった。しかしながら、NO産生とアポトーシスとの間には積極的な因果関係を認めることはできなかった。すなわち、1,25(OH)_2D_3の添加は、分化やNO産生促進とは逆に、全体としてアポトーシスを減少させる方向に作用した。一方、マウス初代培養の骨髄細胞においては、上記の薬物単独あるいはいずれの組合せにおいても有意なNO産生能力の増強効果が認められなかった。また、蛋白レベルでのiNOSの発現は検出できなかった。
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