研究概要 |
本研究は,コラーゲンと細胞の相互作用を仲介する蛋白としてのRGD-CAPの役割探求を目的としており,今年度までに以下のことを明らかにした。 (1)ニワトリ胸骨軟骨cDNAライブラリーからRGD-CAPの完全長cDNAを単離し,全塩基配列を決定した。ニワトリRGD-CAPのcDNAは680個のアミノ酸に翻訳され,4つの繰り返し構造を持ち,またC端近傍にはインテグリン認識部位であるRGD配列が存在した。 (2) cDNAを発現ベクターpET-28に組み込み、大腸菌を形質転換した後、RGD-CAP蛋白を発現させ,それを精製後、マウスに免役し抗体を作製した。 (3)この抗血清を用いたWestern blot法によってニワトリ胸骨軟骨培養細胞について調べた結果、Conditioned Medium中でのRGD-CAP量はTGF-β添加により経時的に増加し,先にブタ軟骨細胞で観察されたTGF-βによるmRNAの増加と一致した。ニワトリ胚の頚椎において軟骨が分化する過程でRGD-CAPは基質形成層から肥大層にかけて多く分布していた。 (4)ウサギ胸骨軟骨細胞培養Conditioned Mediumをrecombinant RGD-CAP-カラムにかけ,4M尿素での溶出画分に含まれる蛋白質の分子量およびアミノ末端配列を解析したところ,コラーゲン以外にもオステオネクチンに結合することが示唆された。 (5) recombinant RGD-CAPをコートしたシャーレ上にウサギ関節軟骨細胞を播種し、伸展に対する影響と初期接着に対する影響を検討したところ,軟骨細胞の伸展及び初期接着は促進された。また,I型、II型,III型,V型コラーゲンの共存はRGD-CAPの作用を増強した。これらの作用はEDTAで阻害され、2価の金属イオンにより亢進し,RGD-CAPの細胞接着及び細胞伸展促進作用はインテグリンを介すると推察された。
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