研究概要 |
実験にはウシガエルを用いた。脊髄を破壊した動物から舌を摘出し味覚円盤を切り出した。酵素処理により単離味細胞を得た。パッチクランプ法の全細胞記録法を用いて味細胞の膜電位を-50mVに保持しながら、-100mVから+100mVの間のランプ電位変化に対して流れる膜電流を測定して電流-電圧(I-V)特性を求めた。電極内液に1mM EGTAを加えて静止時の細胞内Ca^<2+>濃度を約17nMとして、細胞外液にCa^<2+>イオノフォアであるイオノマイシン(3μM)を加えると、味細胞はコンダクタンス上昇を伴う内向き電流を発生し脱分極した。このイオノマイシン誘発電流は、イオン交換実験によりカチオン電流であると考えられた。EGTAを除き、1mM Ca^<2+>を加えた電極内液で細胞内を灌流すると、ある細胞はコンダクタンス上昇を伴う内向き電流を発生したが、他の細胞はコンダクタンス上昇を伴う外向き電流を発生した。同様に電極内液に50μM 1,4,5-IP_3を加えて膜を破り全細胞クランプの状態にしても、内向き電流を示す細胞と外向き電流を示す細胞が見られた。0.5mM GTPγSを電極内液に加えて膜を破ると、約40%のロッド型味細胞は立ち上がりの速い一過性の成分と遅い成分からなる二相性の内向き電流を示した。電極内液中のCl^-濃度を104mMから10mMに減らすと、遅い内向き電流は消失したが、速い一過性の内向き電流は依然として観察された。従って速い成分は、カチオン電流であり、遅い成分はCl^-電流であると考えられた。電極内液に0.5mM GTPγSに加えて10μM U73211(ホスホリパーゼCの阻害剤)を含ませると、ロッド型細胞の速い内向き電流の大きさは、対照値の23%に低下した。以上の結果より、カエルの味覚においても、G蛋白が関与した情報変換機序の1つであるIP_3-Ca^<2+>系により、カチオン電流が活性化されるものと考えられる。
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