研究概要 |
マウス顎下腺(SMG)内の生理活性物質はステロイド ホルモン、特にアンドロゲンによってその生合成が調節されている事は良く知られている。一方、近年漢方薬に対する関心の高まりから、各種の生薬製剤が臨床の場においても広く用いられてきた。しかしながら、SMGに対するこれら生薬の薬理作用についてはまだほとんど知られていない。そこで今回、本研究では代表的な生薬製剤である人参のマウスSMGに対する作用を生理活性物質の誘導能を指標にその作用機序を検討した。その結果、ICR系3週齢の停留睾丸マウスに、7〜350mg/kgの各濃度の人参を3週間、連続経口投与し、SMG内のEGF量、esteroproteinase活性とその4種のアイソザイム(腺性カリクレインのmK1,mK9,mK13,mK22)を各々RIA法、Trautschold法及び等電点電気泳動法で測定したところ、人参の投与によってこれら生理活性物質はほぼ投与量に従って増加した。しかし、この時の血中テストステロン量には変動は見られなかった。また睾丸除去マウスではこのような人参による生理活性物質の誘導は観察されなかたった(平成8年度実験)。更に、睾丸除去マウスSMGの可溶性分画を用いて、Scatchard plot法でアンドロゲン レセプターの解析を行ったところ、人参の投与によってKd値は変化しなかったが、Bmax値は非投与群(対照群)に比べ約1.5〜2.5倍に増加した(平成9年度実験)。以上の事から、本研究の結論は、人参がSMG内のアンドロゲン レセプターを誘導する事によって、この腺のEGFや腺性カリクレイン等の生理活性物質を発現した可能性が示唆された。
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