研究概要 |
多くの好中球は口腔内あるいは肺胞,腸管内などの体腔内へ遊出し,異物・細菌などの貪食作用による生体防御作用と,細胞内容物の逸脱による組織傷害作用の二面性を持っている.好中球アポトーシスは細胞内容物の逸脱による組織傷害を抑制し,炎症の終熄,炎症の増悪の抑制にかかわると考えられる.歯周炎制御における好中球の役割を明らかにするため末梢血中と口腔内に遊出した好中球とのアポトーシスの機構について研究を行った.1)両細胞から調整した細胞核はCa,Mgの存在下でDNA切断がみられなかった.2)末梢血好中球は血清非存在,存在下でactinimycin D,TNF-αによりラダー状のDNAの切断を伴うアポトーシスが誘発された.3)口腔内好中球では同じ条件下でもDNAの切断は観察されず,アポトーシス抵抗性であった.4)末梢血好中球はfMLP,TPAによりプライミングしてもアポトーシス抵抗性にはならなかった.5)いずれの細胞もH-7,カスペース阻害剤ではアポトーシスは抑制されなかった.6)HL-60細胞の顆粒球への分化に伴うアポトーシスはカスペース阻害剤で抑制されたがプロテアソーム阻害剤では速やかなアポトーシスが観察された.口腔内好中球のアポトーシス抵抗性は単なるプライミングやenndonucleaseやカスペースの差異では説明できず,口腔内への移行に関わる接着因子の発現とそれによるシグナルが口腔内好中球のアポトーシスを修飾していると考えられる.末梢T細胞のアポトーシスはタンパク合成依存性と非依存の系により制御されていること,マクロファージはTNF,プロテアソーム阻害剤でDNA切断を伴うアポトーシスが引き起こされることなどから種々の炎症細胞のアポトーシス制御機構の総合的な結果が歯周炎の病態を修飾していると考えられる.
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