研究概要 |
び漫性浸潤舌癌における細胞増殖マーカーである増殖細胞核抗原(PCNA)と核小体形成体(NORs)と、癌抑制遺伝子p53ならびにCyclin D1蛋白、p34cdc2遺伝子産物、アポトーシスおよび癌遺伝子bcl-2の発現について検索した。対象は舌癌63例の生検標本を用い、PCNA、Cyclin D1、p53、p34cdc2、アポトーシス、およびbc1-2の免疫組織染色と、NORsの鍍銀染色を行った。発現状況は顕微鏡下で観察し陽性細胞比率を算定した。浸潤様式の判定は山本・小浜分類に従い、4Cと4D(4型)をび慢性浸潤癌とした。 結果 1. PCNAとの関連:PCNAとの関連では1-3型で低値(26.5±7.9)を示し、4型で高値(41.1±6.7)を示した。 2. NORsとの関連:浸潤様式との関連ではNORs数は1-3型で3.2±0.8、4型で4.9±1.4であった。1-3型は低値を示すのに対し4型では高値を示した。 3. Cyclin D1との関連:Cyclin D1との関連では浸潤様式1-3型で10/24例(41.3%)であるのに対し、4型では12/13例(92.3%)と高値であった。 4. p53との関連:p53は10%未満を陰性とした。陽性例は1-3型では16/34例(47.0%)であるのに対し、4型では9/13例(69.2%)と高値であった。 5. p34cdc2との関連:p34cdc2は5%以上を陽性とした。陽性例は1-3型で24/48例(50.%)であるのに対し、4型では10/15例(66.7%)と高値であった。 6. アポトーシスとの関連:アポトーシス細胞標識率は1.2型で2.53±1.0、3型で1.95±1.5,4C,4D型で1.54±1.04であった。4C,4Dで低値を示した。 7. bcl-2との関連:bcl-2陽性症例数は1,2型で4/13例(30.8%)、3型で11/27例(40.7%)、4C,4D型で9/11例(81.8%)であり、4C,4D型では高値を示した。 結論と考察 舌癌では、高度浸潤癌はPCNA,NORs,Cyclin D1,p53,p34cdc2,bcl-2のすべてが高値を示した。これに対し、アポトーシスは低値を示した。このことから高度浸潤癌では細胞増殖活性に関連する遺伝子異常の細胞の発現比率が高値であり、これら遺伝子異常の集積がび漫性浸潤癌の発生に関与していることが示唆された。
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