研究分担者 |
山田 信一 広島大学, 歯学部, 助手 (10263724)
大谷 敬子 広島大学, 歯学部, 助手 (20243587)
末井 良和 広島大学, 歯学部・附属病院, 助手 (10206378)
福田 登美子 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (90029984)
杉山 勝 広島大学, 歯学部, 助教授 (70187681)
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研究概要 |
舌癌を中心とした悪性腫瘍患者の癌治療(主に放射線治療)が嚥下動態に与える短期的な影響を明らかにするためにDigital Angiography装置を用いて研究を行った. 放射線治療の前後の嚥下動態を比較すると,治療後に嚥下反射遅延時間の延長,すなわち、,造影剤が下顎枝後縁を通過する時点から一連の喉頭挙上の開始する時点までの時間の差が長くなる現象を認めた.言い換えれば,嚥下反射が遅延するようになった.また,一回量が少ないほど,その傾向が強い傾向を示した.定性的変化では,全症例ではないが,嚥下反射が起こる前に造影剤が咽頭へ流入するPremature swallowing様式,嚥下中に造影剤が喉頭に入る喉頭流入,嚥下後に造影剤が舌,喉頭蓋谷や食道入口部に軽度残存する症例を認めた.これらの事より,放射線治療は直接嚥下障害を起こすとはいえないが,嚥下障害のリスクをあげる可能性が高いことが示唆された. 放射線治療後,舌再建を伴う手術療法では手術前後と比較して,術後,口腔通過時間,嚥下反射遅延時間,咽頭通過時間の延長,分割嚥下や誤嚥の発現,造影剤の口腔底,咽頭蓋谷や食道入口部に残存及び舌運動不良を認めた.再建時の皮弁が小さい場合,これらの症状は強く現れた.よって,嚥下障害は舌の運動障害だけではなく,再建時の皮弁の大きさも無視できないことが示唆された. 術後誤嚥を起こす患者に,誤嚥防止体位として顎引き体位を用いて嚥下を行うと,誤嚥を防止可能な症例とそうでない症例に分れた.現在の所この理由は明らかではないので,術後誤嚥を起こす患者の誤嚥防止指導には,X線透視により必ず確認する必要性があることが示された.
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