研究概要 |
表現形質や増殖・分化が比較的良く解明されている造腫瘍性ヒト唾液腺導管上皮細胞HSG細胞内のdNTP濃度を,高速液体クロマトグラフィー(HPLC・システム,Waters 510 Pump,LC Spectrometer Model 481254nm)を用い,リン酸アンモニウム緩衝液を溶出液とし,Partisil-10 SAX(陰イオン交換体)カラムで測定した.HSG細胞は,イ-グルの最小必須培地に子牛血清とL-グルタミンを含む増殖培溶液(DME)を用いた. 培養細胞からのdNTPの抽出法,多量に混在するrNTPの酸化処理法および抽出したdNTPの精製・濃縮などについて,再検討した.その結果,dNTP抽出法として,TCA,ついで70%アルコールによる抽出が効率良く,rNTPの酸化処理法としてGarrettらの方法(ただし,dGuOを添加した)が副反応が少なかった.また,前処理カラム(Sep-Pak)による精製・濃縮はTCAを使用しない場合に効果的であることがわかった. 時間以上培養した種々の状態のHSG細胞内のdNTP濃度を測定した.4段階における細胞内のdCTP,dATP,dTTP,dGTPの濃度は,それぞれ5.3±2.9,13.7±5.9,26.3±11.5,6.2±4.4pmol/106個であり,培養細胞の細胞周期とそのぞれのdNTP濃度の関係は時間とともに変化していることが考えられた.また,共存するrNTP(TCA抽出の場合,CTP,ATP,UTP,GTPそれぞれの濃度は11,83,36,21nmol/106個)はdNTPに比べ極めて高濃度であった.rNTPがdNTPの約3000倍存在するため,rNTPの酸化除去反応がより重要であった.また,dNTP濃度が低いため,不純物を含む粗抽出液を直接イオン交換カラムで分析する現法に多くの問題点が残った.
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