研究概要 |
1、ヒト歯肉線維芽細胞(Gin1及び臨床分離株F-41G)を、低濃度酪酸(0.5mM)と共に培養したところ、生存率が著しく増加した。また、上清中のサイトカイン産生量を測定したところ、IL-1α,IL-1β,TNFα及びTGFβの産生は認められなかったが、多量のIL-6及びIL-8の産生が認められた。 また,IL-11の産生も認められた。 2、Gin-1及びF41-Gは高濃度酪酸(5mM)添加により生存率が低下し、断片化率の測定から培養48時間以降にアポトーシスを誘導した。 3、低濃度酪酸と共に培養したGin-1及びF41-Gは、コントロール群と同様の細胞周期像を示したが、高濃度酪酸と共に培養した細胞群では、G1期での細胞周期の停止が誘導された。 4、高濃度酪酸と共に培養したGin-1及びF41-Gは培養初期(4h)においては、Fas抗原及びbcl-2蛋白の変動を認めなかったが、培養後期(16h)においてはFas及びbcl-2の発現が増加した。p-53の発現はいずれの培養期間中も認められなかった。低濃度酪酸存在下においては培養初期にFas及びbcl-2の僅かな発現増加を認めたが、p-53の発現はいずれの培養期間中の認められなかった。 以上の結果から、低濃度酪酸は線維芽細胞に対し培養初期にbcl-2蛋白の発現を誘導することによりアポトーシスを回避し、その結果、IL-6,IL-8及びIL-11の産生を伴う増殖促進を促すことが判明した。一方、高濃度酪酸はG1期での細胞周期の停止を伴うアポトーシスを誘導するが、その初期要因としてFasやp53の関与は少ないものと思われる。しかしながら、培養後期でのFasの増加は酪酸誘導アポトーシスに、少なからずもFas/FasL系の関与があることを示唆している。
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