研究概要 |
<研究目的> 歯肉炎症組織に一酸化窒素産生酵素が誘導されるかを実験的にラットで検証した。その後、前骨髄性白血病由来HL-60細胞を用いて、歯周病関連細菌と一酸化窒素の刺激で、アポトーシスがどのように誘発されるのかを検討し、併せて活性酸素関連酵素の細胞内誘導について酵素免疫学的に検出した。 <実験方法> ラット歯肉には圧迫刺激を行った部位に対して、免疫酵素抗体法を用いて、FITCをラベルした抗体で染色をおこなった。HL-60を培養後、一定の細菌数に希釈した5種類の歯周病関連細菌(Porphyromonas gingivalis W50,W83,ATCC33277,Prevotella intermedia ATCC25611,ATCC25261)の菌体で刺激した。一定時間刺激した後、蛍光色素(ヘキスト33342,アクリジンオレンジとエチジウム・ブロミド)で染色し、落射型蛍光顕微鏡で観察し、クロマチンの凝縮でアポトーシスを判定した。細菌の菌体刺激と同時に、一酸化窒素を自発的に放出するNORを添加した時のアポトーシスの誘導についても検討した。また、これらの刺激でHL-60細胞内に誘導されるSODやカタラーゼについて、免疫蛍光抗体法で染色し、観察した。 <結果および考察> 免疫組織学的染色では、炎症の部位に相当して、NOS抗原抗体反応陽性の部分が検出された。HL-60細胞のアポトーシスは各細菌間でほとんど差がなく、対照ともあまり差がなかった。SODやカタラーゼも同様に顕著な誘導は見られなかった。これは、HL-60が未熟な細胞であり、細菌菌体・内毒素に反応するには更に他の因子、たとえばインターフェロン-γなどの関与が必須であると思われる。
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