研究概要 |
ファイブロネクチン(Fn)は細胞外マトリックスを構成する代表的な糖タンパク質であり、細胞接着、遊走、分化などに受容な働きをする。各組織特有のオールタナティブスプライシングを受ける主な三つのドメイン(EIIIB,EIIIA,IIICS)の内、前者二つのドメインは、初期発生及び創傷治癒過程においてスプライシング受けずに多く発現する事が知られているが、その生物学的活性は未だわかっていないので、検索した。 (1)リコンビナントヒトFnフラグメントの分離精製:FnタイプIIIドメインから構成されるフラグメントでEIIIB,EIIIAを含むか含まないかにより8種類ものをpET expression systemを用い、原核細胞に発現させ、クロマトグラフィーを用いて分離精製した。 (2)吸着試験:上記タンパクがポリ塩化ビニルアッセイ・プレートに吸着されることをELISA法を用いて確認したところ、いずれのフラグメントも約10nMで安定して吸着された。 (3)細胞接着試験:細胞接着試験の結果、ハムスター継代培養線維芽細胞(NIL)とヒト歯肉線維芽細胞(HGF)はいずれのフラグメントに対しても接着した。EIIIBドメインを含むフラグメントは含まないものと比較し、低濃度においてコントロールの血漿Fn同様の強い接着が認められた。EIIIBドメインへの直接的な細胞接着は認められず、他のフラグメントとの競合試験を行なった結果、EIIIBドメインには細胞接着を促進する可能性があることが示された。EIIIAを含むフラグメントと含まないものとで、細胞接着に特に有為差はみられなかった。接着班とストレスファイバーを蛍光染色したところ、EIIIBドメインを含むフラグメントは含まないものと比較し、血漿Fn同様の強い細胞の接着と伸展を示した。したがって、EIIIBドメインには細胞接着を促進する可能性があることがさらに確認された。
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