研究概要 |
歯根膜繊維芽細胞(PLF)の機能はホルモンあるいはサイトカインなどの外来性因子のみならず,細胞自らが産生する内因性因子によっても制御されている。PLFは細胞密度が高くなるとビタミンD3レセプター(VDR)発現を誘導する因子を産生することを我々はすでに明らかにした。そこで本研究では,まずVDR発現誘導因子と既知の増殖因子との関連について調べた。その結果,インシュリン様成長因子-I,IIおよび上皮成長因子はPLFのVDRmRNA発現を誘導したが,トランスフォーミング成長因子は影響しなかった。このことは,PLFのVDR発現がこれら増殖因子も含む様々な内因性因子によって制御されていることを示すものであった。従って,PLFのみが特異的に発現する遺伝子群を同定し,それら遺伝子の面からPLFの機能を考察することとした。PLFの遺伝子群から歯肉線維芽細胞(GF)の遺伝子群をサブトラクトしたcDNAライブラリーを作製し,サザンハイブリダイゼイション法によって,PLFに特異的と思われる34種類のクローンを得た。それらは,5個が未知のクローンであり,その他は各々が既知の遺伝子の一部に高い相同性を示すものであった。この中にはnm23protein,v-fos transformation effector proteinなど,細胞の分化・増殖に関わる遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子群は,同一個体のGFに比較して得られたものであり,細胞分化や硬組織代謝のみならず従来の認識にはないPLFの機能を発現する可能性がある。今後は得た遺伝子群を機能によって分類し,どのような分化段階で発現するか発現量の差を含めた特異性を検討する必要がある。
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