研究概要 |
接着性レジンの直接覆髄を歯髄の炎症性変化のみならず修復性変化よりも評価する目的で,ニホンザルに形成された露髄窩洞にBis-GMA系(BG)ならびに4-META/MMA-TBB系(MMA)のレジンを直接充填し,歯髄の変化の病理組織的検討,及び超微細構造の観察を行った.さらに種々の蛍光色素を用いた多色ラベリング法により硬組織内時刻描記を行い,被蓋硬組織形成の経時的変化の様相も検索した.BGでは,覆髄直後の急性炎症は3〜7日以内にほとんど治まり,また被蓋硬組織形成は7〜14日の間に開始され,その後経時的に添加されていくことが判明した.それらは露髄部周囲の歯髄壁より当該部位を閉鎖するように形成されており,形成初期においては,一般にラベリング線がscallop状を呈し,不規則な速度で石灰化が開始されていた.さらに,観察された各種ラベリング線の両端はすべて一致しており,従って,常にそれら両端まで拡がる層状の硬組織が,順次新生添加されていることが判明した.90日後では,露髄部を完全閉鎖したDentinbridgeとレジンの界面に,骨組織の吸収添加時に観察される接合線に類似したプロテオグリカン基質と考えられる一層(接合線様構造物)が認められ,人工物と生体の接合を担っているものと推察された.一方MMAでは,覆髄直後より歯髄組織内にレジンが含浸したと思われる層(軟組織ハブリッド層)が急性炎症を伴って出現した.ところが本層は異物として認識されており,7〜14日頃より歯髄はこの層を吸収しながら修復機転に移行するため,修復性変化が遅延する傾向が認められた.90日後では,レジン-新生被蓋硬組織間に歯髄組織が一層取り残され,接合線様構造物は観察されなかった.惹起された炎症の程度は,接着システムの化学的,機械的諸性質の違いにより異り,その影響により硬組織の石灰化の様相に相違が認められた.
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