研究概要 |
c-METに属する新規チロシンキナーゼ受容体STKをクローニングし,マウス破骨細胞の機能発現に重要な役割をはたすことを発見した。最近,ヒトでのSTKに相当する分子はRONであることが明らかにされたため,ヒト骨髄細胞由来破骨細胞においてRONの発現を検討し、そのリガンドであるMSPの作用,またMETのリガンドであるHGFの作用を検討した。あわせて、src,FAKなど非受容体型チロシンキナーゼの細胞内分布を検討した。その結果,ヒト多核細胞にMSPを添加することにより,(1)多核細胞の40〜50%は,RON抗体に対し,陽性であった。(2)MNCに形態変化がおこり細胞突起の伸展,細胞の肥厚が認められた。その際,(3)MNC周囲にFAKがより明確に認められた。(4)c-srcの局在は,未刺激群と比較して細胞周囲に変位した。(5)MNCにhylの存在が認められたがMSP添加による変化は著明ではない。(6)従来からヒト骨髄由来の破骨細胞様細胞では,骨吸収はみられないといわれているが,今回の結果ではMSP添加によって骨吸収が対照群に比して約4倍の面積に達した。(7)HGFでは有意な骨吸収促進は認められなかった。(8)また,HGFはCFU-GMに由来する細胞の増殖を促進するが,MSPには認められなかった。 RONのリガンドであるMSPをヒト破骨細胞に添加することによって骨吸収促進およびc-src,FAKの発現が増加したことから,RONの作用によりc-src,FAKを介して破骨細胞の機能亢進をしている可能性が示唆された。HGFはCFU-GM系細胞の増殖を促進し,その結果として破骨細胞の形成を促進するのに対し、MSPは,増殖は促進せず形成されたMNCの機能を促進することが考えられた。
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