研究概要 |
難治根尖性歯周炎を有する40根管より173株の微生物を分離同定した.その中で複数の根管より採取されたPseudomonas aeruginosa,Staphylococcus aureus,Bacillus subtilis,Enterococcus faecalis,Candida albicansの5種を培養し観察した.培養方法として1.マルチプレートにcell diskを置く方法、2.試料瓶にcell diskを吊り下げる方法の2つについて行った.また培地として1.ではTS Broth、2.では培地の成分による影響を考慮して(1)TS Broth,(2)plasma添加TS Broth,(3)plasma添加生理的食塩水の3種の培地を用いた.いずれも37℃で3、7、14日間静置培養した.また培地の蛋白濃度の測定も行った. その結果1.ではEnterococcus faecalis,Candida albicansを除いて、2.ではCandida albicansを除いて各微生物にglycocalyx様物質の産生が認められバイオフィルムを形成している可能性が示唆された.また蛋白濃度の高いplasma添加培地においては短期間での産生と共に増加傾向も見られることから、バイオフィルムの形成にplasmaの存在が大きいことが考えられた. バイオフィルム形成後の有効薬剤を調べる目的で、上記と同様の方法によりplasma添加TS Broth中で7日間培養しバイオフィルムを形成させた後、FC(原液,10倍希釈,100培希釈)、J(原液,10倍希釈,100培希釈)、NaClO(10%,5%,1%)、強酸性水中に15分間浸漬した。なおNaClO、強酸性水はStaphylococcus aureusのみに行った.再度TS Broth中に浸漬し30秒間撹拌した後、37℃で24時間並びに48時間静置培養を行った。 その結果FC,Jは原液で用いると全ての微生物に効果を示した.しかし希釈するにつれ効果も減弱した.NaClOも濃度依存性を示した。強酸性水は全く効果を示さなかった.難治根尖性歯周炎においては微生物は根尖近辺に残存している可能性が強く、かつ浸出液もあることから薬液濃度はかなり減少していることが考えられる.今後いかにしてバイオフィルムを破壊あるいは溶解していくか考える必要があると思われる.
|