研究概要 |
精神的ストレスと歯周疾患発症および進行との関わりを明らかにするため,分子レベルで把握できる神経ペプチドを対称としてとりあげ,炎症歯周組織での神経ペプチドの産生ならびにその作用をmRNAレベルで整理することを目的とした。 1)炎症性歯周組織では,神経成長因子(NGF)αならびにβのmRNAが検出された。個体差および部位差はほとんどみられなかった。 2)炎症性歯周組織ではケラチノサイトなどがNGFαならびにβを産生していることを示唆する結果を得た。 3)炎症性歯周組織ではマクロファージなどがNGFαならびにβの標的細胞として機能していることを示唆する結果を得た。 4)慢性炎症性歯周組織ではsubstance-Pおよびcalcitonin gene related peptide(前駆体であるβ-preprotachykinin mRNAで検出)やvasoactive intestinal peptideなどの神経ペプチドmRNAの産生の検出頻度は低く,個体差が大きかった。 5)しかし,それらの神経ペプチドの産生相互,ならびに臨床症状との間にあきらかな相関は認めなかった。 6)neuropeptide-Y mRNAの産生はまったく検出されなかった。 以上のことから,慢性炎症状態の歯周組織では,ケラチノサイトなどが産生するNGFを介した免疫調節機構が存在することが示唆された。このことは歯周組織の免疫応答の神経系による制御を直接証明したものではないが,神経細胞から分泌される神経ペプチドも含めてこれらの因子によって歯周組織の炎症反応ならびに免疫応答が調節されていることを示唆する結果と考察された。
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