研究概要 |
本研究は、高密度CCDを使用したデジタルスチルカメラを応用し、光切断法による面形状一括計測システムの開発を目指すと共に、将来に向けての口腔内での直接形状計測システムに対する検討を行うことを目的としたものである。初年度は、歯列模型のサイズを対象とした光切断法による計測技術の開発を目指して,まず計測に用いる6自由度特殊ステージを作製をおこなった.次に,計測方法の検討に入り,通常のライン光による光切断法だけではなく,クロスパターン投影や多値パターン投影など、より高度な手法についても検討を加えた。その結果,本実験で採用したカラーポジフィルムに焼き込んだパターンをプロジェクタで投影する手法では,パターン(白・黒・赤・青・緑など)のサイズ(各色のライン幅やドットサイズ)を均等配置した場合,実際に投影されるパターンに偏りが生じること,投影したパターンが複雑になるほど画像として識別するのが困難になることなどが判明した.次年度では、それらの結果により,比較的良好に処理できると考えられた複数のラインパターン(縞模様)を用いることとし,1.計測データの処理/解析方法の検討、2.実際の計測事例への応用、3.システムの検証と今後の課題の検討、などを行なった.その結果,1.については,画像処理の段階で,不要なデータの除去に一部手作業による処理を残したものの,アクティブなスレッショルドを用いて画像の濃淡が部分的に変化しても,確実に投影パターンを処理できる技術を開発し,スムーズに処理が行えるようになった.また,光学系のセッティングによる画像のゆがみとそれに伴う誤差,などについても考察を加えることが出来た.2.については,上顎正常歯列の臼歯部を対象に,パターンの投影方向に対するカメラの視線方向のセッティングの影響,形状に依存する実際の計測可能範囲,模型の色や周囲環境の光の状況などについて検証し,咬合面形態のラフな形状であれば比較的容易に計測できることが確認された.しかし,支台歯模型など,精度が要求される部分においては,不十分であり,3.において,最終的に被計測物である歯列模型のサイズと被写界深度による画像のボケ,撮影方向の誤差やレンズ系に由来する画像のゆがみなどとともに,必要とされる精度を満たすための条件について整理を行った.また,将来、本技術を発展させて口腔内直接計測(すなわち、歯科治療の際に、従来行っているような患者の口腔内の型を取らずにすむような方法)を行う可能性については,これらの条件をいかに口腔内に持ち込めるサイズにまとめあげることができるか否かがポイントであり,何らかのブレイクスルーとなる技術が必要であることが示唆された.
|