研究概要 |
本研究の目的は,大阪府老人大学講座の受講者を対象に,義歯の使用率,満足度等を調査するとともに,高齢者の生活意識や食生活などについての情報を収集することによって,高齢者の生活における義歯の存在を評価し,今後の歯科医療のありかたについて,具体的な資料を提供しようというものである.本研究は,大阪府老人大学講座受講生の全員を対象としたアンケート調査と,その中のボランティアを対象とした対面調査からなる. 1.アンケート調査:2474名(男性1222名,女性1252名,平均年齢66.6±4.3歳)の調査対象者のうち,全部床義歯の装着者は上顎が14%,下顎が10%,部分床義歯の装着者はそれぞれ37%,41%であった.また,義歯が必要であるにもかかわらず装着していない者も含めて,上下顎とも約2/3が有床義歯の対象者であった.健康状態の自己評価については,上下顎全部床義歯者(CD群),上下顎部分床義歯装着者(PD群),および上下顎天然歯列者(天然歯群)に差はみられなかったが,義歯装着者のうち,義歯の満足度や義歯による摂取可能食品のスコアが高いものほど,健康状態が「良好」とした者多かった. 2.対面調査:調査対象者は,297名(男性163名,女性134名,66.3±4.2歳)とした,一人平均現在歯数 は21.7本(男性22.3本,女性21.0本)であり,上下顎のいずれかに義歯を装着している者は全体の約半数を占めた.栄養摂取状況と義歯の関係については,エネルギーやたんぱく質,カルシウムなどの充足率は,天然歯群と義歯装着者群ではほとんど差がみられなかったが,義歯に対する不満群では,満足群と比較して摂取不足の者の割合が高く,義歯に対する満足度の低い者では健康状態への影響が危惧された.
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