研究概要 |
緒言 歯の象牙質と修復用コンポジットレジンとの接着強さの向上および象牙質脱灰層をもとの組織に回復させることを目的に,アパタイト析出型の2液性プライマー(A液:硝酸カルシウム,HEMA水溶液/B液:リン酸2アンモニウム,N-アクリロイルアスパラギン酸水溶液を調整し,その接着効果および接着界面構造について検討した。 結果および考察 脱灰象牙質に本アパタイト析出型プライマー処理を施した後のリン酸エステル系ポンディング材の接着強さは,15【.+-】3.2MPaの値を示してコントロール(HEMA系プライマーのみ)の9【.+-】2.5MPaと有意に差があった。この結果は,接着層にアパタイトが析出したために弾性率が向上したことおよびボンディング材の重合収縮率が減少したことに基因しているものと考えている。一方,象牙質脱灰層のコラーゲンは本プライマーの作用によって乾燥しても線維形態が保持されている。これは,プライマー成分中のHEMA水溶液の影響であると考えている。また,アパタイトの析出は,割断試料において脱灰深さ4〜5μmに相当する領域に粒状物が観察され,アパタイト析出型プライマーによってコラーゲン線維間にアパタイトの存在を確認した。さらに、この層に光重合型ボンディング材を作用したところアパタイト単独相の下側に3〜4μmの樹脂含浸層が生成される。 結論 象牙質脱灰層のコラーゲンの固定化はプライマー中のHEMAに影響される。本プライマーを用いた接着システムにおいて,象牙質とコンポジット間にコラーゲン,アパタイトおよびレジン成分から成るハイブリッド層が生成することが判明した。以上の結果から,アパタイト析出型プライマーは,接着強さの向上と安定性につながることが示唆された。
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