研究概要 |
顎関節内障の病因論を確立するための基礎的情報を得ることを目的として,夜間ブラキシズム中の下顎位(特にグラインディングの発現側)と下顎切歯歯軸の側方傾斜およびアンテリア・ガイダンスの3者の相互関係および,夜間ブラキシズム中の下顎位と頭位との関係について検討した. 習慣性ブラキシズムを有する顎関節内障患者6名および,習慣性のブラキシズムは有する顎関節内障を認めない者6名を対象として,前歯部規格写真(咬頭嵌合位,切歯切端咬合位および左右側各犬歯切端咬合位)を撮影し,下顎切歯歯軸の側方傾斜角および前頭面において側方切歯路が水平基準面に対して示す移動角(アンテリア・ガイダンス)を計測した.その結果,いずれの被験者群においても下顎切歯歯軸の側方傾斜角とアンテリア・ガイダンスとの間には相関を認めなかった.これは,我々がすでに解析した習慣性ブラキシズムを有しない被験者群における夜間下顎運動記録の結果(投稿中)とは異なるものであり,習慣性の夜間ブラキシズムと咬合の関連における特徴の一つとなるものであると考えられた.また,これらの被験者のうち,左右のアンテリア・ガイダンスが6度以上異なる被験者においては,夜間ブラキシズム中にアンテリア・ガイダンスの小さい側にグラインディングする頻度が高いことが示唆された.また,習慣性ブラキシズムを有する被験者群を対象として睡眠中の頭位を解析した結果,すべての被験者を通じてほぼ一定の頭位においてブラキシズムを行っている頻度が高いことが明らかになった.以上の結果から,従来解明されていなかった夜間ブラキシズム中の下顎運動の特徴の一部が示されたとともに,今後の夜間ブラキシズムの解析の基礎となる重要な情報が得られた.
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