研究概要 |
舌癌に対する放射線後障害を予防するため,ガ-ゼ,コットンロール,モデリングコンパウンド,シリコン印象材等が放射線治療補助装置(スペーサー)として利用されてきた。しかし,これらのスペーサーは,口腔内で直接法で製作するため製作が容易でなく,また,装着感,耐久性,線量低減効果に劣っていた。そこで,製作が容易で,装着感,耐久性,線量低減効果に優れたスペーサー材料を選定するとともに,有歯顎者用および今まで顧みられていなかった無歯顎者用スペーサーの製作法を確立し,その放射線後障害予防効果を臨床的に評価する目的で本研究を行い,以下の結果を得た。 1.放射線線量低減効果に優れた歯科材料は,厚さ10mm以上のシリコーン印象材とアクリリックレジンであった。 2.有歯顎者に対しては咬合挙上タイプのスペーサー,無歯顎者に対しては複製義歯タイプのスペーサー,来院から放射線治療開始までの期間がない患者や無歯顎者で義歯のない患者では咬合床複製タイプないしはシリコーン印象材製のスペーサーを製作する。 本学附属病院で製作している咬合挙上副子タイプのスペーサー,複製義歯タイプのスペーサー,および咬合床複製タイプのスペーサーは,半数の患者が違和感を訴えたが,重さ,適合性,安定性に問題がなく,治療期間中24時間装着可能であった。また,放射線後障害の発生も少なく,特に,最も発生を予防しなければならない放射線骨壊死の発生はなかった。 4.医療施設に対するアンケート調査結果から,91.4%の施設でスペーサーが使用されていた。スペーサーの使用によって放射線後障害の発生,特に,骨壊死の発生が予防されることが示された。しかし,スペーサーの材質,形態や製作法については,各施設独自に行われており,規格化されていなかった。 今後,形態面で更なる改良を行い,放射線後障害発生予防効果に優れた本スペーサーの普及を図っていく予定である。
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