顎機能の診断を目的として、生体での直接観察が出来ない顆頭運動とコンピュータ断層撮影法(CT)により得た顆頭の形態とを、両者の座標系を一致させることによって、重ね合わせて同時に観察する。また健全者と顎口腔機能に障害のある者とを比較するために、顆頭の形態と運動軌跡とを重ねることによって、顎機能検査への手がかりを得ようとした。 下顎の運動は、MM-JIにより6自由度で測定して、コンピュータ処理することによって任意点の運動を得た。また、CT画像に治具を使って、座標系の原点を同時に撮り込むことにより、得られた骨の形態と下顎運動測定の座標系を一致させた。重ね合わせの精度は0.5mm程度と考えている。 咬頭嵌合位の明確な健全有歯顎者5名について、治具によって運動測定の座標系の標点を写し込んだ顎関節部のCT画像を得る。同時にその状態で下顎運動を測定し、コンピュータ処理して画面上で重ね合わせた。 その結果、健全有歯顎者では、切歯点は勿論として、顆頭点の運動が円滑に行われることが判明した。 次いで、臨床的に疼痛や開口制限はないが、クリック音があり、下顎運動が円滑でないとの自覚を持つ者1名について、同様の方法で測定したところ、顆頭運動の最も上下幅が狭くなる点を求めても、健全者のようには収斂する位置を求めることが出来なかった。また顆頭運動の経路に突起状の異常がみられた。 さらに例数を増す必要があるが、顆頭運動がスムースでないことがクリック音の発生部位の確認に役立つとともに、切歯点運動と関連づけて観察する事が顎機能の診断に有用なことが確認出来た。
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