研究概要 |
近年,歯科治療時のインフォームドコンセントの重要性が指摘されている.しかしその効果については科学的には実証されていない.そこで補綴治療の中で印象採得時のストレスを循環動態および血漿中カテコールアミンの変化から把握し,インフォームドコンセントによる処置内容の説明の有無によりストレス緩和の効果について検討を行った. 方法および結果:被験者は大阪歯科大学男子学生20名(平均21.6歳)とした.このうち10名についてアルジネート印象材による印象採得を行うこととその術式,予想される口腔内状況説明した群(以下I.C.あり群)とし,他の10名を何も説明しない群(以下I.C.なし群)とした.ストレス反応の指標として自動血圧計を用い血圧,脈拍数の測定を,レーザー血流計を用い指尖部末梢血流量の測定を,また肘静脈から採血を行い血漿中カテコールアミンの測定を行った.測定時期は安静時,印象用トレー挿入時,挿入後2分(トレー除去時),5分,15分,30分とした.循環動態(血圧,脈拍数,RPP)および血漿中カテコールアミンは印象採得時に上昇する傾向を示し,有意な変化はみられなかったが,I.C.なし群の方がI.C.あり群よりも高い上昇率を示した.印象採得後の各測定値は両群とも低下し,I.C.あり群では安静時の値より低下し,収縮期血圧において15分後に安静時比較および群間比較で,ノルアドレナリンにおいて15分後に安静時比較で有意差がみられた.一方I.C.なし群では各測定値は印象採得後に低下したが安静時の値よりも高値を示した.以上よりI.C.あり群において印象採得中の各測定値の上昇率が低く抑えられたこと,および印象後のストレスの回復がI.C.あり群の方がI.C.なし群より低下したことからインフォームドコンセントのストレス緩和の効果が示唆された.
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