研究概要 |
口腔癌の治療ならびに予後を考える上で顎部リンパ節転移は重要な意味を持つ。一方,血管新生は,腫瘍の進展や転移に大きな役割を果たしており,腫瘍の血管新生の測定,すなわち徴小血管密度(MVD)は,独立した転移予測因子となり得る(Anticancer Res,1995報告済)。本研究では腫瘍実質において血管新生作用を示すdThdPaseならびにVEGFの口腔扁平上皮癌での発現を免疫組織学的に検索し,血管新生の評価であるMVDを含めた臨床・病理組織学的な因子との関係について検討した。 dThdPaseの発現は腫瘍細胞の大部分の細胞質に均一に認められ,その発現はMVDと関連しており,転移ならびに腫瘍浸潤様式とも関連していた。すなわち37/55例(67.3%)のdThdPase陽性例では,MVDは高く(48.5±27.9),dThdPase陰性例18/55例(32.7%)では,MVDは低かった(26.3±12.9)PD-ECGFの発現は明らかにMVDと相関しており(P<0.01),転移(P<0.01),腫瘍浸潤様式(P<0.01)とも相関を認めた。VEGFは陽性コントロールの大腸癌症例に比べ,染色性が弱く,口腔癌における発現の点で問題があると思われた。以上より,dThdPaseは血管新生と密接な関係があることが示唆されるとともに,腫瘍実質からの情報で,口腔癌患者の予後,あるいはリンパ節転移を予測しうることが示唆された。
|