研究概要 |
口腔扁平上皮癌における17番染色体の数的異常をFluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて検出した。p53遺伝子は17番染色体短腕上に存在している。免疫組織染色法によりアポトーシス関連抗原のp53とBcl-2蛋白を検出し、17番染色体異常との関連性について検討した。口腔扁平上皮癌27症例を対象とした。FISH法は、セントロメアDNA特異的プローブ(D17Z1,Oncor社)を用い、Pinkelらの方法で行った。細胞100個以上について計数し、17番disomy、polysomy、monosomyグループに分類した。モノクロナール抗体は、p53(Bp53-12,Bio Genix社)とBcl-2(Daco-bcl-2 124,Dako社)を用い、ABC法で行った。3+:50%>;2+:25〜50%;1+:5〜25%;0:<5%に分類した。有意差判定は、Man-Whitney UtestおよびChi-Square testを用い、危険率p<0.05以下を統計学的有意差ありと判定した。扁平上皮癌では有意にpolysomyが増加していた(p=0.0005)。17番polysomyとp53蛋白の過剰発現の間に有意な相関がみられた(p=0.0228)。しかし、17番polysomyと腫瘍のステージ分類(p=0.2275)、再発(p=0.1574)、Bcl-2過剰発現(p=0.6580)との間には関連はみられなかった。p53は81.5%、Bcl-2は48.1%に検出された。p53は核に検出され、Bcl-2は細胞質に検出されたが、核陽性の細胞も散見された。p53過剰発現と再発の間に有意な関連がみられたが(p=0.0441)、Bcl-2とは関連はみられなかった。p53とBcl-2の発現の間には逆相関がみられた(p=0.0421)。17番polysomyは、口腔重層扁平上皮の癌化に関与しており、p53過剰発現とも有意な相関がみられた。この現象に対する仮説として、17番polysomyによって変異型p53遺伝子が増加し、変異型p53遺伝子の活性化によって、p53蛋白の過剰発現がもたらされることが示唆された。
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