研究概要 |
口腔扁平上皮癌細胞BHY細胞(骨浸潤,非転移性)とHN細胞(転移性)における細胞外基質分解酵素の発現を検索した。BHY細胞の高い局所浸潤能には大量に産生されているproMMPs(1,2,7,9)とTIMP1低下が、また骨浸潤能にはprocathepsin Lの発現がHN細胞のリンパ節転移には活性型MMP2の発現とTIMP2の低下が関与していることが示唆された。次に末梢血液中に存在する癌細胞の検出を目的に、健常人より採取した全血に口腔扁平上皮癌細胞を混入し上皮細胞マーカーとしてCytokeratin 20(CK20)mRNAの発現をRT-PCR法により検索を行った。全血5ml中に10^2個以上の癌細胞を混入した場合CK20 mRNAの増幅が可能であった。さらに、口腔癌患者末梢血よりCK20mRNAの検出を試みたところ、12例中11例よりCK20mRNAが増幅された。一次治療が終了し癌の再発が認められない症例においては血中からCK20mRNAは検出されなかった。さらに口腔癌生検材料凍結切片よりゼラチネース活性を検出した。正常歯肉においては上皮部ではほとんどゼラチネース活性は検出されず、間質部でわずかに検出された。一方、腫瘍組織の癌部には高いゼラチネース活性が検出され、癌に接している間質部には相対的に活性型MMP2の上昇が認められた。さらに遠隔転移、リンパ節転移を示した症例は転移を示さなかった症例に比較して高いゼラチネース活性を示した。 また我々の教室でクローニングした増殖抑制遺伝子TSC-22の癌細胞の浸潤転移に及ぼす影響をヌードマウスモデルで検索したところ明らかな浸潤・転移抑制作用は認められなかった。また、転移癌と非転移癌におけるTSC-22 mRNAの発現に明らかな差は認められなかった。
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