研究概要 |
非接触型レーザードプラー組織血流計と時系列データに対する新しいスペクトル解析法を用いた血行動態測定システムを、口腔腫瘍切除後の再建皮弁・筋皮弁に応用し、皮弁血流の生理的変動の特性を明らかにすることを目的に研究を行った。 対象症例は、口腔腫瘍切除・即時再建患者15例であり、その内遊離皮弁・筋皮弁再建症例は10例、有茎皮弁・筋皮弁症例は5例であった。対象症例の採取予定部皮膚および口腔再建皮弁・再建皮弁周囲の粘膜の血流を継時的に測定・解析した。測定装置には、レーザー組織血流計(ALF21N, アドバンス)を使用し,口腔内用に改良して、先端に特殊偏光素子を有する非接触型プローブを、粘膜貼付剤を用いたステントにて測定部位との距離を維持しつつ血流測定を行った。得られた時系列データの解析は、MemCalc(諏訪トラスト)を用いて、周波数領域におけるスペクトル解析によって精確に決定した周期モードを求め、非線形最小自乗法を線形化することによって時間領域における最適あてはめ曲線を決定して解析を行い、血流量の精緻なスペクトル解析結果を得た。 本研究により、術中・術後の口腔内における再建皮弁血流の非侵襲的で精緻な連続測定と解析が可能であることが明らかにされた。本システムを用いると、術直後の血液や唾液の多い口腔内において、また開口障害を伴っていても皮弁血流のモニタリングが可能であった。血流量のスペクトル解析の結果より、口腔粘膜と再建部皮膚とには、そのべきスペクトルの傾きと低周波数領域の区分積分値に有為の差が認められた。この粘膜・皮膚の構造上の違いによると思われる差異には、継時的な変化は認められなかった。また遊離皮弁・筋皮弁と有茎皮弁・筋皮弁の間にも、0.15Hzの低周波数領域の区分積分値の差異が認められ、交換神経の関与が示唆された。
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