研究概要 |
頭頚部癌における頸部リンパ節転移の診断ではCT画像診断は有用な診断法の一つであるが,造影CT画像診断において各観察項目の所見評価や診断過程は検者の主観に大きく左右されファジィ性が存在する. このようなCT画像の特長と検者の主観的評価を生かした診断ロジックを構築し,頸部リンパ節転移のCT画像診断にファジィ推論を応用した画像診断支援システムを作製し検討した. 対象は頭頸部偏平上皮癌症例で,術前CTにて頸部リンパ節を認め,術後病理組織学的転移の有無が確定したもので,システムの構築に24例(転移14例,非転移10例),調整と検証に43例(転移26例,非転移17例)の計67例を用いた. CT画像上のリンパ節の観察項目として6項目を設定し,各観察項目の評価の計量化をファジィスケールを用いて行った.次いで各観察項目の所見を3〜4のカテゴリーに分類し,これを基に入力メンバーシップ関数を作成した.入力メンバーシップ関数により評価した所見を多変量解析を行い各項目の診断に対する重要性を求め,1項目または複数項目でIF THENルールによる出力メンバーシップ関数を作成した. 画像の所見評価は臨床経験年数の差によっても各々の観察項目の診断への重み付けやその印象は異なるが,本システムは様々な背景の検者においても一定の診断精度を得ることを目標としたり,臨床経験年数の異なる複数の検者にて所見入力,評価を行い,システムの妥当性について検討した. その結果,3名の検者の経験診断における診断成績は,正診率では差はなかったが,感度,特異性では検者の主観に左右され,ばらつきを認め,経験診断の不安定性が示された.それに対しファジィ診断成績は,感度,特異性,正診率のいずれも約90%と良好な成績を得,経験年数の異なる複数の検者においても安定した結果を示し,システムの設定は妥当であると考えられた.
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