研究概要 |
1.咀嚼中に分泌される唾液量と、その内味覚による影響はどの程度かについて40人(男女各20人)の小児(5歳児)を対象に検討を行った。6種類の食物(クッキー、ポテト、御飯、タクアン、ソ-セージ、りんご)の一口量を求め、各々そのままのもの(a)と、それをつぶしたもの(b)とを用意した。それらを(a)は普通に咀嚼し、(b)は咀嚼せず舌と口蓋で味わい、一定時間後に重量既知のコップに吐き出させ、重量を計り、始めの食物の重量を差し引いて唾液分泌量を求めた。その結果最も分泌量が多かったものはクッキー(5.1±3.3ml/min)で少なかったものは御飯(2.5±1.7ml/min)であった。それらの分泌量の内、味覚による分泌量の占める割合はクッキーが最も高く(94.3±14.1%),ライスが最も低かった(73.5±12.5%)。 2.食塊嚥下後口腔内に残存する食渣の量について検討した。各食物一口量を決め一定時間咀嚼させた後嚥下させ、嚥下直後、10秒後、1分後、3分後に20mlの蒸留水で洗口させ、回収したものを凍結乾燥し重量を測定した。一口量の乾燥重量と比較し、どの程度の食渣が口腔に残留するかについて調べた結果、クラッカー15.2%,ふ菓子8.1%,カステラ4.2%,白米2.9%,魚肉ソ-セージ1.8%であった。 3.臼歯部頬側面の唾液クリアランスについて検討を行った。1mol/LのKClを含む寒天をプラスチックホルダーの3個の円柱型の凹みに固まらせ、そのホルダーを中央の凹みが上顎第1大臼歯頬側面にくるようにレジンプレートで口腔内に固定した。一定時間後ホルダーから3個の寒天を取り出し、300ml,100ppmのNaCl溶液内にそれぞれ入れてKClを全て溶出させた。その溶液中のKClの濃度から、その部位の唾液クリアランス率を推定した。その結果、耳下腺唾液は安静時においては第1大臼歯の遠心方向より近心方向に流れる量が多いことが明らかとなった。
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