研究概要 |
WHOでは、西暦2000年の口腔保健上の目標の1つに『12歳児でDMF歯数3以下に』という項目がある。わが国では平成5年度で3.6と,まだ先進国に比べ,高い数値を示している。12歳未満の永久歯齲蝕の約80%を第一大臼歯が占めており,この歯牙の咬合面および隣接面齲蝕を予防することで,WHOの目標達成,並びに先進国水準への到達が可能である。さらに、個人のう蝕感受性と年代に応じた齲蝕感受性の高い歯牙に対する集中的な予防や口腔衛生の向上により小児に蔓延するう蝕を効率的に抑えることが、可能と我々は考えた。 本研究では,実験協力校の学童の中から,咬合面う蝕の多発傾向にある1年生、および隣接面う蝕の発生開始時期に当たる4年生を対象に,う蝕罹患傾向を高める因子を,ベースライン時のアンケート調査,唾液中の細菌検査,乳歯および永久歯のう蝕罹患状態,口腔衛生状態よりう蝕リスク因子を検討した。 その結果,ベースライン時のう蝕罹患状態と唾液中のMirtacs streptococci量および口腔衛生状態が強い相関を示し,さらにアンケート調査の結果より,歯磨きの回数,保護者のチェック,食事摂取頻度,および親の子供の口腔内への関心度に関する項目でう蝕罹患状態と相関が認められた。 これらの結果を踏まえ,個人におけるリスク分けを試み,リスク因子を是正するプログラムを3カ月毎に施術群に施行し,対照群には,3カ月毎にう蝕の進行度を診査し,う蝕リスクとう蝕進行度の関連性を調査した。 その結果,唾液中のMirtacs streptococci量および口腔衛生状態と食事頻度が改善した施術群では,対照群に比べう蝕の発生が著しく抑制されており,またこの3つの因子がう蝕の発生,進行に大きく関与していた。したがって,この3因子を是正するプログラムがう蝕抑制効果を高めるものと思われ、今後の学童歯科保健で重視すべき点であると結論づけられた。
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