研究概要 |
破歯細胞は破骨細胞に類似した多核巨細胞であり,両者の類似点,相違点が報告されているが,細胞の特性は未だに明らかではなく,現在までヒト破歯細胞培養を行ったという報告もみられない。本研究ではヒト破歯細胞培養系確立のため,培地として100%低カルシウム食飼育ウサギ血清(低Ca血清)を用い,ウシ骨片上でヒト抜去乳歯歯根吸収面から採取した細胞を培養した。その後,標本は酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)染色を行い光学顕微鏡で観察,また骨片を走査型電子顕微鏡で観察し以下の結果を得た。 1.低Ca血清を用いた培養法の採用により,ヒト乳歯歯根吸収面から採取した破歯細胞の培養に初めて成功した。 2.培養された細胞は,ヒト乳歯歯根吸収面に存在した破歯細胞の前駆細胞から誘導された成熟破歯細胞である可能性が高く,この培養法がヒト破歯細胞の前駆細胞培養系として結うようであると思われた。 3.低Ca血清を用いた培養細胞は,TRAP陽性であり,さらに培養7日目にはTRAP陽性多核細胞の著明な増加が認められた。 4.低Ca血清で培養した7日目の細胞は,ウシ骨片上に吸収窩を形成したことから,この細胞は骨吸収能を有する破歯細胞であると思われた。 5.低Ca血清は,培養細胞の分化・増殖に必要な因子を含むことが示唆された。 6.カルシトニンはTRAP陽性細胞の活性および骨吸収能を抑制した。 7.コントロールとした正常ウサギ血清を用いた培養では,TRAP陽性細胞は減少した。
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