研究概要 |
先に我々はイソニトロソメルドラム酸を無極性溶媒中ケトン存在下加熱すると環状ニトロンが得られることを見い出した.この反応では中間体としてニトロソケテン(1)が生成すると考えられる.本研究では各種キラルケトンと1との反応よりキラル環状ニトロンを合成し,不斉1,3-双極子環化付加反応を基盤として光学活性変形アミノ酸の不斉合成に成功した.さらに,米国研究者との共同研究によりFT-IRスペクトルを用いてガス状態での1の存在を初めて確認出来た. 研究成果を以下に要約する. 1)各種キラルケトンと1との反応を詳細に検討し,ジアステレオ選択性を明らかにした.(+)-Nopinone,(+)-campheniloneと1との反応からは単一のキラルニトロンが得られたのに対し,1-menthoneからは二種の成績体がほぼ1:1の比率で生成した.1と1-menthoneより得られるキラル環状ニトロンを用いて,生理活性の面で注目されている天然修飾アミノ酸,cyclopentenylglycineをはじめ各種修飾アミノ酸の完全不斉合成を達成した. 2)最近,機器スペクトルにより数多くのケテン誘導体が検出されている.申請者らは米国研究者との共同研究により世界ではじめて1をFT-IRスペクトルを用いて検出することに成功した.1はイソニトロソメルドラム酸を80℃以上に加熱すると徐徐に発生し,160℃付近では分解することが判った.1の寿命は90℃でおよそ4時間であり,反応中間体として十分安定である. 3)1の新規利用法を目的に1の前駆体であるイソニトロソメルドラム酸と各種含窒素化合物との反応を行ない,複素環化合物の新規利用法を見い出した. 4)イソニトロソメルドラム酸とdiazomethaneとの反応を検討し,新しいニトロソムテン誘導体,methoxycarbonylnitrosoketeneの存在を確認した.さらに本反応において複素環化合物の中間体となる新たなニトロン体を単離することが出来た.
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