研究概要 |
前年度(1996年)本研究助成成果報告において,α'-(p-トリルスルフィニル)フリル/チエニルα,β-不飽和エノンの合成と,そのC-C二重結合をジエノフィル(スルフィニル基と反応点が1,4-位)反応点に用いたシクロペンタジエンとのルイス酸触媒によるディールス・アルダー反応において高い不斉誘起反応を述べた.また,ルイス酸としては,イオン半径が大きくしかも高い配位能を持つランタノイドトリフラート(20モル%)が反応にきわめて有効であることをも報告した.本年度はその研究課題の継続として,その成果を踏まえ,新規スルホキシドを設計し,遠隔不斉誘導のみならず,これまで達成できなかった光学活性スルホキシドの不斉反応におけるスルフィニル不斉補助基の直接的回収・再利用に成功したので以下に要約する. α'-(p-トリルスルフィニル)フリル/チエニルα,β-不飽和エノンがジエノフィルとして有効であり,高い不斉誘起が観測されており,これらの複素環のかわりにピロール環を採用すれば,不斉反応後の変換反応により,ピロールスルホキシドが回収可能となる.本コンセプトを実証するため,光学活性2-スルフィニルピロールを合成し,その窒素原子上にα,β-不飽和エノンが結合したジエノフィル(=エノイルピロール)を合成した.ランタノイドトリフラートを反応プロモーターに用いたシクロペンタジエンとのディールス・アルダー反応は,高い不斉誘起で反応が進行し,4種の可能なジアステレオマ-のうち,一種類のendo付加体のみが圧倒的に優先して生成することが分かった.さらに,主付加体のアルコリシスにより,対応するエステル体が高収率で得られたのみならず、光学活性2-スルフィニルピロールを光学純度を損なうことなく定量的に回収することに成功した.
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