研究概要 |
1.有機合成化学の分野でルイス酸として汎用されているトリメチルトリフレート(TMSOTf)と三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF_3・Et_2O)がアセトニトリル中で速やかに反応して新しいルイス酸BF_2(OTf)を生成することを見いだした。すなわち、BF_3・OEt_2とTMSOTfについて^1H,^<11>B,^<19>Fの各NMRを測定し詳細に検討した結果、BF_3・OEt_2とTMSOTfを1:1で加えた時に^1H-NMRにおいて完全にTMSOTfのシグナルが消失し、新たに生成したTMSFのシグナルが観測され、また^<11>B-NMRにおいて完全にBF_3・OEt_2のシグナルが消失し新たに単一のホウ素分子種の存在が確認された。さらに、^<19>F-NMRからはそのフッ素の積分値によりOTf(-SO_3CF_3)基がホウ素に1つ結合していることが認められたことより新たに生成した化合物はBF_2OTfであると推定できた。この反応はケイ素原子とフッ素原子の非常に高い親和性に基づくものであると結論づけることができる。TMSOTf以外にもTMSOMs,TMSOMe,TMSH,TMS-allylについても検討し結果反応速度の差はあれ、いずれもこの反応が進行することが分かった。但し、ホウ素原子と親和性の乏しい原子を有するTMSH,TMS-allylについてはその反応速度は極めて遅いことも分かった。 2.この新しいルイス酸の中でBF_2OTfを用い、イドース型ピラノース誘導体に対するC-グリコシル化反応を検討したところ、分子内に存在する水酸基を保護することなく反応が高選択的に進行することを見いだした。また、水酸基が保護されている基質に対してもBF_3・OEt_2やMe_3SiOTfを単独で用いた場合よりも圧倒的に反応が速いことを見出した。
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