研究概要 |
α-ヘテロ原子置換ホスホン酸は糖質、脂質、タンパク質などの代謝によって生じるリン酸モノエステルのミミックした構造修飾に活用され、新しいタイプの生体機能制御化合物の分子に取り入れられている。まず、ジフルオロメチレンホスホン酸誘導体の合成に広く利用可能な不斉合成素子を合成する目的でリパーゼ触媒を用いる不斉アシル化反応により2-(ω-ホスホノアルキル)-1,3-プロパンジオール誘導体の両エナンチオマーを合成した。得られた不斉合成素子をL-AP-3およびL-AP-4の効率合成に利用した(Tetrahedron:Asymmetery,1996,7(No.9),2743-2754に掲載。)一方、プリンヌクレオシドフォスフォリラーゼ(PNP)阻害活性化合物を合成する目的でシクロプロパン環を有するキラルなジフルオロメチレンホスホン酸誘導体を合成し、ホスホノアルキルグアニンの配座固定型類縁体に誘導し、生成物のPNP阻害活性を評価した。ヨードベンゼン誘導体と[diethoxyphosphinyl)difluoro-methyl]zinc bromideとのカップリング反応を応用しアリールジフルオロメチルホスホナ-ト誘導体の簡便な新規合成法を確立した(Tetrahedron,1997,53,815-822に掲載)。さらに、このカップリング反応を不飽和ハロゲン化物およびアセチレン誘導体に適用しα,α-ジフルオロアリルホスホナ-トの一般的な合成法を確立した(J.Org.Chem.,1996,61,7207-7211に掲載)。ホモキラル-1,3-ジオキサンアセタールとリン求核剤との反応によりα-ヒドロキシホスホナ-トを合成した(J.Chem.Soc.,Perkin.1 in press)、さらにチロシンキナーゼ阻害物質の合成を目的にリン酸化チロシンをミミックしたホスホヒドロキシメチルフェニルアラニン(HPmp)の両エナンチオマーを合成した(Tetrahedron,1996,52,11725-11738に掲載)。キラルなHPmpをDASTでフッ素化反応に付しホスホノフルオロメチルフェニルアラニン(FPmp)を得た。FPmpの鏡像過剰率は低く、フルオロ化はS_N1型に進行することを明らかにした。
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