研究概要 |
当初の目的であった,光学活性N_a-tert-butoxycarbonyl-4-bromotryptophan methyl ester(1)と1,1-demethylallylalcoholのHeck反応によって得られる N_a-tert-butoxycarbonyl-4-(2-hydroxy-2-methyl-1-butene-1-yl)-1-tosyltryptophan(2)の脱炭酸を伴うラジカル閉環反応による,cyclohexa[c,d]indole誘導体への閉環反応は成功しなかった.即ち,カルボキル部分をthiol ester,selenol ester,oxime ester等に変換した後,光反応あるいは熱によるラジカル反応を試みても,目的とする閉環反応は起こらなかった. 2.1を原料として,麦角アルカロイド類の生合成上の共通の中間体である γ,γ-dimethylallyptophan(DMAT,3)および,エルゴリン骨格を有するchanoclavine-I(4)の全合成を行った.いずれの合成においても,4位のブロム基を足がかりとした,Heck反応による炭素鎖導入が鍵行程であった.DMAT合成では,1,1-demethylallylalcoholとのHeck反応によって得られた2の脱水反応が鍵反応であり,chanoclavine-I(4)合成の場合は,1のa-カルボキシル基を還元してアルデヒドにした後,Witting反応によってa,b-不飽和エステル(5)とした後,5のHeck反応による分子内ビニル化によって,3環性化合物,cyclohexabenz[c,d]indole誘導体(6)とする行程が鍵反応であった.
|