研究概要 |
アシル-CoA:コレステロールアシル転移酵素(ACAT)阻害物質であるピリピロペン類及びGERI-BP001の合成においては,基本母核であるドリマン型セスキテルペン部分に相当するABC環部の立体選択的な構築とピリジン環を有するα-ピロン環部の導入が課題である.本研究ではピリピロペン類合成の重要中間体と考えられる三環性化合物(7R,8S,11S,12S,13S)-8-メチル-7,11,12,13-テトラオキシ-3-オキソ-14-オキサポドカルパンの構築法を検討したところ,C環部に相当する(2R,4R,5S,6R)-2-[(4R)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]-6-tert-ブチルジメチルシロキシ-2-メチル-3,4-イソプロピリデンジオキシ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-3(6H)-オンの立体選択的合成に成功した.すなわち,2-リチオフランを光学活性源である(R)-2,3-O-イソプロピリデングリセルアルデヒドに付加し,得られるフリルグリセロールを酸化し(2R)-1-(2-フリル)-2,3-イソプロピリデンジオキシ-1-プロパノンに導いた.このアシルフランへのメチル基導入を種々の条件下で検討したところ,ジクロロメタンあるいはジエチルエーテル中でメチルリチウムを付加すると,反応はジアステレオ選択的に進行し目的とする(1R,2R)-1-(2-フリル)-1-メチル-2,3-イソプロピリデングリセロールが98%de以上の選択性で得られた.本反応における選択性の発現はα-キシレーション遷移状態により説明される.得られたフリルグリセロールを環拡大しピラノン体に導き,そのラクトール部を保護した.ついで,エノン部のジヒドロキシル化後,ジオール部をアセタールで保護することにより上記化合物の合成を行った.本化合物はC環部に相当するピラン骨格を有すると共に,ピリピロペン類合成に必要な不斉炭素を持っている.今後,3位へのイソプロペニル単位とグリセロール部へのジエン単位の導入を行い,鍵反応である分子内Diels-Alder反応を行うことによりピリピロペン類の立体選択的合成を達成する予定である.
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