研究概要 |
1.各種β-ケトアミノエステルの合成とパン酵母による脱アルコキシカルボニル化反応:グリシン誘導体と4-ベンジルオキシブタナ-ルから誘導して得られたβ-ケトアミノエステル類のパン酵母による反応を行ったところ、ケトンの不斉還元よりもエステルの脱アルコキシカルボニル化反応(加水分解に続く脱炭素反応)が優先するという事実を見出した。すなわち、アミノ基をアセチル、カルボン酸をエチルエステルとした基質において72%の高収率で反応が進行した。原料から見ると本反応はアルデヒドのアミノメチル化反応であり、合成的に有用である。しかし、本反応は基質のα-位にさらに置換基を導入したβ-ケトアミノエステル類においては酵素の基質特異性が働き全く反応が進行しないため、その不斉合成法の開発を断念せざるを得なかった。 2.リパーゼを用いる光学活性α,α-二置換α-アミノ酸の合成:2-ペンズアミド-2-ヒドロキシメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸メチルエステルのビニル酢酸を用いたリパーゼによる不斉アセチル化反応およびそのジアセチル体のリパーゼによる不斉加水分解反応を検討した結果、前者の反応では収率91.3%,62.2%ee,後者の反応では収率17.6%,4.9%eeと満足のゆく結果は得られなかった。しかしながら上記基質の合成中間体であるオキサゾリン誘導体のリパーゼによる光学分割を検討し、95%ee以上の選択性で収率良く得ることに成功した。生成物の立体配置はL-(2S,3R)-スレオニンから同一化合物に誘導することにより決定した。 3.上記リパーゼによる光学分割法によって合成した99%eeの(R)-(-)のアルコールを用いて、近年冬虫夏草から単離された強力な免疫抑制物質であるMycestericin E,Fの不斉全合成に有用な合成中間体である光学活性α,α-二置換α-アミノ酸ユニットを有するアルデヒドを合成することに成功した。
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