研究概要 |
トコフェロール配糖体の研究に端を発した本研究は.免疫反応に於ける認識過程を糖含有の低分子化合物を用いて制御しうることを示そうとしたものである。 これまで免疫制御の研究の中で.糖鎖による分子認識に関する基礎的研究は数多くなされているが.いまだ免疫応答の高次の制御機構は不詳である。酵素化学に於てその特異的阻害剤の発見により多大な進歩がもたれされたように.免疫制御の分野においても本研究によりもたらされる合成低分子配糖体による免疫制御は.免疫の応答に関して.新しい境地を開くことができたものと考える。すなわち.トコフェロール配糖体がIgE抗体と抗原との反応を特異的に阻害したという発見を基盤として.免疫反応を制御しうる化合物としてAryl Glycosideをデザインした。 これに属する一群の化合物について(a)至適Aglycon部の選定(b)至適糖種(糖鎖)の選定(c)Aglycon部と糖部分の最適結合式を決定すべく各種Aryl Glycosideを合成し.これらの生理活性(肥満細胞からのヒスタミン遊離阻害活性)と(a)〜(c)に関し.その化学構造と構造活性相関を検討した。本研究により明らかとなった成果を次に説明する。(a)至適アグリコン部について:2,3,4トリメチル,4-O-アルキルハイドロキノンβ-D-グルコシドを各種合成し.肥満細胞からのヒスタミン遊離阻害活性を検討した。その結果.アルキル部分の炭素鎖が6〜8の化合物が最も強力な阻害活性を示し.その活性はトコフェロール配糖体の10倍に及んだ。(b),(c)至適糖種及びアグリコン部と糖部分との結合様式について:各種アリルグリコシドを合成して.至適糖種及び結合様式について検討した所.IgR抗体に含まれる糖種及び結合様式.すなわちα-マンノシド体が最も強力な阻害活性を有することを明らかにした。
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