研究概要 |
1.ニトロアレーン分析法の改良:既報の化学発光検出HPLCによるトロアレーン分析システムにニトロアレーン分離用ODSカラム,亜鉛還元カラム,高圧流路切り替えバルブ等を導入することにより,極微量ニトロアレーンの分析システムを完成した.これにより,数mg以下の大気粉じん中の2-ニトロフルオランテン(2-NF),2-ニトロピレン(2-NP),4-NP,6-ニトロクリセン(6-NC)等を定量可能とした.2.ディーゼル粉塵抽出物の直接変異原性におけるニトロアレーンの寄与:ディーゼル粉塵のbenzen-ethanol(3:1)抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-hexane,dichloromethane,methanolの混合溶媒)で5分画した.Ames試験による直接変異原性(S.typhimuriumYG1024株)は高極性溶媒(dichloromethane-methanol及びmethanol)の2分画に集中し,ニトロアレーンはこのうちの前者に集中した.直接変異原性におけるニトロアレーン(8種)の寄与率はこの分画で50%余り,全分画合計の約1/3に達し,大きいことが明らかになった.3.札幌,東京,金沢の大気環境比較:金沢市,東京都,札幌市の大気中DNP及び1-NP濃度は札幌≧東京>金沢の純に低くなったが,都心は都市による差は小さかった.3都市の中では,札幌が1,3-,1,6-,1,8-ジニトロピレン(DNP)濃度に対する1-NP濃度の比が最も大きく,その理由の一つとして,ディーゼル車の保有台数の割合が高いことが考えられた.濃度推移は日内変動(昼高夜低)及び季節変動(夏低冬高)を呈したが,都市により程度に差があった.4.大気中のニトロアレーンの分解と二次生成:金沢市内の都心と郊外の大気中ニトロアレーンの比較により,DNP及び1-NPは大気輸送中に分解し,その主要因が太陽による光分解であることがわかった.また、2-NFと2-NPはディーゼル粉塵には検出されず郊外ほど存在比が大きくなることより,大気中で二次生成することが推定された.
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